20160403

ON HEALTH by Moshe Feldenkrais

”健康である”ということは、一体どういったことなのでしょうか?病気をしていない人のことなのか?体に痛みや不調がない人のことなのか?または、悩み一つない人のことを指すのか、、、?

  ”A healthy person is one who can live fully his unavowed dreams."
  
  "健康な人というのは、内にある夢に精一杯生きれる人である。”

これは、モーシェ・フェルデンクライス博士のON HEALTHという学術論文の序文からの引用で、この論文の中で彼はたくさんの遠回りをしながらも驚くような”健康”の定義付けをしてくれている。私はこの小論を何度も何度も読み返してはたくさんの新しい発見をしているので、今日はそれをみなさんにシェアしたいと思う。

論文の中で、まず博士は "Life is process." - 人生は止むことのないプロセスであると述べ、「動的状態」=休憩をうまく入れつつも常に変化をし動いている状態こそが健康の基盤であると主張している。つまりそれは常にエネルギーや活気に満ち溢れた状態であるということ。そしてその次に、”Health is capacity to recover from shock" - "健康とはショックから回復できる能力である”とも記述されていて、これはおそらく英語の「Resilience」という言葉がそれに相当するものかと思う。ただ単に回復するということではなく、例え苦しい状況に追い込まれたとしても、はね返るように挽回できる人のことを言っているのではないかと。

そしてそれらのことを考えたときに真っ先に思いつくのが恐縮ながら私の夫のことなのですが。彼はその博士の言う”unavowed dreams"=内なる夢、自分が信じていることを追いかけては時に打ちひしがれ、また懲りずに追いかけるというまさに変化に富んだ人生を歩んできた人なのです。


せっかくのいい機会なので、彼の破天荒人生をざっくりとここに書き出してみます。(時系列):調理師見習いからはじまり、彫刻家、自転車屋の店員(in 大阪アメ村)、英語教師、建築家弟子、ホームレス、パタゴニアにて漁船乗組員(本人曰く地獄)、ブエノスアイレスにて商社マン、ライター、ダンサー、そして現在、樹木医/映画監督となるわけです。


これを器用貧乏又は飽きっぽい人と言ってしまえばそれまでなのですが、止まることなくこれら全部のことを己に正直に全力でやってきたと思うと頭が下がる。そして自分のことながら、5年前にこんな人を夫に選んだでしまったのだから、もう一傍観者どころではなく、彼の成長のプロセスの真っ只中に私自身もいるということになる。


ちなみに博士は論文の最後に、世間の多くの人は自らの成長と共に自分の得意なことをもっと梳り極めようと切磋琢磨していくのが一般的だが、そうではなく、その人生過程の中で自分の「夢」が常に改変されていくことこそが健康な状態なのではないかとまとめている。


「健康」という言葉自体を考えた時、実は日本語においてのその言葉の歴史は浅い。そして調べてゆくと、英語のHealthの語源はギリシャ語のHolos - ”完全な状態”に起因すると出てきた。だとすると、やはり私たちはその「Whole=完全さ」を日々求めながら多種多様に富んだ人生をワクワクと生きているのかもしれない。


そんなことを考えながら、夫に今までの人生で一番ワクワクした章はどれか?と尋ねてみた。この人は例え天地がひっくり返っても「君と一緒にいる今この時だよ」なんてロマンチックなことは言ってくれない。「うーん、ホームレスかな、、、?」と言った後しばらく間をおいて、「いや、まだだな。これからなんじゃないかな?」といったので、私は隣で冷や汗をかきながらも、その返事が最も彼らしい答えだと思ったと同時に、とても”健康”な人と結婚できて本当に良かったと心から思えたのだった。




Cows, Yellow-Red-Green, Franz Marc



                                   


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